2011/10/03

試写で『CUT』(アミール・ナデリ)@シネマート六本木。これは参った。良いとか悪いとかじゃなくて、参った。死んだ兄の莫大な借金を、殴られ屋をやって死にもの狂いで返済しようとする若手のシネフィル映画監督。ストーリーにはまるで現実味がなく、ナデリ監督の固い思念だけで持ちこたえている映画だが、主演の西島秀俊を筆頭にスクリーン上の全員に監督の志が馮依したかのようで、稀な強度に貫かれた映画体験ではあった。傷だらけの西島秀俊溝口健二の墓石を抱き締めるショットなど(そういう映画なのです)、他の映画の中にあったら笑ってしまうだろうが、ここでは否応なく納得してしまう。あと、ナデリ監督の世界映画ベスト100(そういうのが発表される映画なのです)の中に、相米慎二の『The Catch(魚影の群れ)』があったことに感じ入った。個人的には、フィルムセンターの「カルト・ブランシュ」のチラシがよく映っていたのがグッド。

『サウダーヂ』も闘争宣言の映画だったが、まさかイランの巨匠監督の手でまた闘争宣言が発されてしまうとは、恐るべし日本映画2011年。