2011/08/15

ムーランルージュの青春』(田中重幸)。戦争をはさんだ20年間、文化人や学生たちを熱狂させた軽演劇の殿堂ムーランルージュ新宿座の記録。思わせぶりな構成や編集の甘さもありドキュメンタリーとしてはやや切れ味を欠くが、とにかく60年前に閉館した劇場の話だから、「間に合って良かった」の一言に尽きる。その熱意はどこから見ても分かる。まず、当時女優や踊り子だったおばあちゃんがみな可愛らしくて参ってしまう。トップアイドルだった明日待子(撮影時90歳)の健在も感動的だったが、高勢実乗の娘である鈴懸銀子さんの姿にもちょっとときめいた。それでもいちばん心中に沁みたのは、やはり当時のレコードから流れてくる明日待子の声である。あと細かい見所としては、ムーランルージュのミニチュアが素晴らしい。これは解体しないで、東京都か新宿区あたりの資料館で展示してくれるといいのだが。

備忘録。ムーランの場所は、新宿東口の、いまピンク映画の新宿国際劇場があるあたり。昭和館(K's Cinema)から新宿国際へ向かう道は、今はビル群に突き当たってしまうが(牛めし松屋がある)、当時はそのまま新宿駅まで道がまっすぐつながっていて、その十字路の左の角にあった。