2013/01/19

誰もお待ちでないと思いますが、孤独に勝手にひっそり選ぶ2012年映画書ベストテン。例年申しておりますが、未だ読めていない本だらけで網羅性はまるでなし、また主題性と着眼点に重きを置いた選考となっております。

1 影の部分(秦早穂子)
2 トリュフォーの手紙(山田宏一
3 岩波映画の1億フレーム (丹羽美之、吉見俊哉編)
4 ル・クレジオ、映画を語る(J=M・G・ル・クレジオ
5 朝鮮民主主義人民共和国映画史(門間貴志)
6 伝説の映画集団NDUと布川徹郎(安井喜雄、田中範子編)
7 アジア映画の森―新世紀の映画地図
8 劇画師伝説 昭和の天才劇画家・植木金矢の世界(松本品子編)
9 「こどもと映画」を考える(キネマ旬報社編)
10 関根忠郎の映画惹句術(関根忠郎)

企画賞:新潮45特別編集 原節子のすべて(新潮45編集部)
企画賞:この悔しさに生きてゆくべし:ぼうふら脚本家 神波史男の光芒(荒井晴彦責任編集)

上位に「フランスと日本」をめぐる本が3冊も入っているのは偶然だろうか。1位は、「戦後」と「映画」の生々しい齟齬によって、無邪気な「映画愛」の息の根を止めてしまう衝撃の一冊。4位はとにかく『浮草物語』論が白眉。外国人によるこれほど美しい小津論は読んだことがない。ル・クレジオは昔から好きだが、映画の本は期待していなかっただけに嬉しい。3位は自分も寄稿したが、だからといって挙げないのは他の方々に申し訳ないほどの充実。5位は、恐らく世界初の本に敬意を表して。今年はビジュアル本はあまり選ばなかったが、8位は映画の外側に疾駆するカツドウヤ精神に感激した。あと、神波史男高見順「いやな感じ」をシナリオ化していたなんて…。

今年は「みすず」の新春恒例の読書アンケートにも初めて参加しましたので、よろしければそちらもご一読ください。